「車売却ってそもそもどんな流れなのか」「車の相続について相談したい」など車売却をご検討の際に出てくる悩みに無料でお答えいたします!
【相談例】
● 車売却のそもそもの流れが分からない
● どういった売り方が最適か相談したい
● 相続で車を売りたいけど売り方が分からない
● 二重査定や減額について知りたい
など
2025年4月13日(日)。広島県の複合レジャー施設「神石高原町ティアガルテン」で、今年も「車輪村2025」が開催された。 開催18年目を迎えた「車輪村」は、神石高原町の有志によって結成された「TEAM車輪村」が主催する、自動車文化を軸とした地域活性イベントだ。地域とのつながりを大切にしながら、モータースポーツの魅力や旧車の世界を広く伝える場として、毎年多くの来場者を迎える。 今回、前半は雨天に見舞われたが、イベント当日の様子をたどりながら車輪村が持つ魅力と、その根底に流れる想いを紹介していきたい。 ■午前:風雨の中、スタート 9:00を過ぎ、風雨が強いものの、会場には次々とギャラリーが訪れた。駐車場周辺にはクルマの列が伸びていく。 レインウェアに身を包んだスタッフの皆さんは、冷たい雨に打たれながらも1台ずつ丁寧に誘導。さらに、足元の悪いなかを歩く来場者にもさりげなく目を配り「おはようございます」「足もと気をつけてくださいね」と声をかける。天候の厳しさよりも、スタッフの皆さんのあたたかさが勝った。 雨のなかの熱気! 10:00からのエクストリーム&ダートトラックバイクショー、まこつシビックパフォーマンス、ドリフトマシンパフォーマンスは雨の中の開催となった。 海外でも活躍するダートトラックの大森雅俊選手、スタントライディングのトップライダー木下真輔選手、沖縄県出身で新進気鋭の屋比久大選手、国際大会に参戦するなど活躍中の照屋則斗選手が登場。水しぶきをあげてマシンが舞うたび、大きな歓声と拍手があがっていた。 続いて、DIYカスタムや車両レビューで注目を集める人気インフルエンサー「まこつ」さんが登場。この日は自身の愛車、シビックを駆ってのパフォーマンスを披露した。動画と変わらない軽快なトークと走りで会場を盛り上げていた。 ドリフトマシンパフォーマンスでは、今年も国内のトップドリフターが会場を魅了。登場したのは川畑真人選手、日比野哲也選手、松川和也選手、石川隼也選手。そしてレジェンド“のむけん”こと野村謙選手、息子の圭市選手にも注目が集まった。 限られたスペースのなか、呼吸を合わせるように展開されるドリフト。スキール音とエキゾーストノートが観客のボルテージを引き上げていく。コースを目一杯使っての迫力のパフォーマンスに、ギャラリーは魅了されていた。 パフォーマンス終了後は、コース内への立ち入りが解禁された。天気も回復し、太陽が顔を見せた。選手たちはサインや記念撮影に気さくに応じており、本番とはまた違う和やかな時間が流れていた。 とりわけ人気だったのが野村選手親子。サインと記念撮影を求める列が途切れることなく続いていた。 地元から訪れていたファミリーに話を聞いた。小学生の息子さんは野村謙選手の大ファンで、昨年の車輪村は都合がつかず悔しい思いをしたそう。「やっと来れた!迫力があった!」と話す息子さんのキラキラした笑顔が、まるで雨上がりの空とシンクロしているようだった。 ■展示参加のオーナーにインタビュー 飲食ブースも営業をスタート。雨が降って肌寒いからか、あたたかいラーメンを求めて列をつくる来場者の姿があった。 お好み焼き、牛串、唐揚げなどの魅力的な店舗がずらり。毎年多様なグルメを楽しめるのも、車輪村の魅力のひとつとなっている。 ■個性あふれるヒストリックカーたち 会場に並んだヒストリックカーやカスタムマシン。ジャンルも異なる車輌が一堂に会した。 ■【VOICE】展示参加のオーナーにインタビュー 車輪村は、オーナー同士の交流の場でもある。 ヒストリックカー展示エリアでは、今年も国産旧車を中心に多彩な名車が並んだ。なかには数十年間1台と歩んできたオーナーや、部品調達から整備まで一人でこなすDIY派も。 オーナーの皆さんがどのようにして愛車と出会い、どんな思いで維持を続けているのか。それぞれのカーライフに耳を傾けてみた。 ●プリンス スカイライン 1500 DX オーナー:渡邉さん スカイラインのオーナー・渡邉さんは90歳。愛車は新車から60年の付き合いだという。年齢を感じさせないハツラツとした様子に、こちらも笑顔になる。 スカイラインは、整備のほとんどを自ら手がけており、レストア済みのブルーのボディが印象的。 車輪村には開催当初から“皆勤賞”で出展しているそうで、スタッフの皆さんとも顔なじみ。この日も奥さまと一緒に来場し、イベントを満喫していた。 ●スズキ ジムニー オーナー:古谷さん 独自のスタイルで注目を集めていたのが、古谷さんのジムニーだった。エンジンルームを覗き込む来場者の姿が絶えなかった。 「悪路に強く、災害時にも頼れる1台。ジムニーは機能性と趣味性の両立が魅力です」 と話す古谷さん。昨夏にエンジン不調を起こしたため、以前に部品取り車から“収穫(摘出)”しておいた予備エンジンをオーバーホールのうえ載せ替えての参加となった。 この予備エンジン、入手当初から腰下がSJ30後期用、腰上がSJ10用のシリンダーにもオイル給油がされるタイプのものが付いているという、異なる世代のLJ50が組み合わされている。ある意味、歴代LJ50のいいトコ取りな仕様となっており、結果的に「耐久性はオリジナルを凌ぐのではないか」とのことだ。 車輪村にも初期から参加していて 「この車輪村は毎年、新鮮さを感じています。いろんなカスタムが一堂に集まり、見るだけでも飽きません。多彩な催しが楽しめて、幅広い世代が集う雰囲気も好きです」 と語っていた。 ▲貴重な当時ものの解説書とパンフレット ●スズキ アルト オーナー:三宅さん 通りすがる人々が足を止めて見入ってしまう、美しい佇まいを放つ三宅さんのアルト。10年越しの想いが叶い、念願だった2サイクルのSS30Vを1年半前に手に入れたという。 骨格からコツコツと自身の手でレストアし、塗装もホワイトに塗り替えた。時間と手間を惜しまず丁寧に仕上げたボディは、まさに三宅さんの愛情そのものだ。 「このクルマは、日常的にバリバリ乗っていて、雨の日も風の日も乗ります。維持も無理なくできてますね」 自分の手の内に収まっている安心感があり、何が起きても対応できる。だからこそ毎日乗れるし、長く付き合える。「自分にしっくりきている」と笑顔で話す三宅さん。 車輪村には5年ほど前から参加しているそうだ。 「さまざまなジャンルのクルマが見られる。新しい発見もあるし、規制のなかで毎年しっかり開催を続けているのはすごいですよね」 と話していた。 ●三菱 ミラージュ オーナー:井上さん 井上さんのミラージュは、所有歴約20年。元のオーナーが4年、3万kmほど乗って手放した個体を購入した。ボディカラーは「アドリアブルー」だそう。 「私が三菱自動車に入社した年に、このミラージュが発売されたんです。生産にも関わっていました。やっぱり思い入れは強いですね」 部品の供給はすでに厳しく、特に外装モールの剥がれに悩まされているというが、あの頃の記憶が詰まったこのクルマを手放すつもりはない。 車輪村への参加は今回で2度目。昨年、旧車仲間に誘われて初参加し、そのおもしろさに魅了されたとのこと。 「運営スタッフの皆さんがとても精力的で、参加者を楽しませようという気持ちが伝わってきます。催しも一日中いろいろあって、世代を問わず楽しめるイベントですね」 と語っていた。 当日、筆者の機材トラブルで外観写真を残すことができなかった。運転席には、手をかけて乗り続けてきた歴史が息づいていた。 ●来場者 小林さん 今年、自動車販売会社に入社したという小林さん。クルマ系イベントへの参加は今回が初めてで「見聞を広げたいです」と、会場をじっくり回りながら真剣にメモを取る姿が印象的だった。 「まだまだ勉強中ですが、クルマが好きです。今日はたくさん写真を撮っています。あとでしっかり復習します」 個人的に気になった車輌は、GTルックにカスタムされたホンダ NSXだそう。「オーナーの方にもお話を聞いてみたいですね」と目を輝かせる姿が印象的だった。 ■フィナーレは笑顔のキャッチボール! 午後4時頃、フィナーレのヒストリックカーパレードが始まるころには、空はすっかり晴れ渡っていた。展示車輌がパレードしながら帰路につく。 沿道には、スタッフたちの姿があった。スタッフであり「車輪村を大切に思うひとり」として1台ずつ送り出す。あるオーナーは、クラクションを鳴らしながら何度も会釈して走り去る。別のオーナーは、助手席の子どもと一緒に手を振っていた。 「ありがとうございました!」というスタッフの声は、途切れることがなかった。来場者のクルマも含め、最後の1台が見えなくなるまで見送り続けた。地域と人をつなぐホスピタリティを感じずにはいられない、あたたかい場面だった。 ■編集後記 雨で始まり、晴れで締めくくった2025年の「車輪村」。天気もドラマの一部になってしまったように感じられた。クルマ愛・地元愛・人のつながりが、今年も会場を熱くした。神石高原での再会を、来年も心待ちにしたい。 ※なお、当日は雨の影響による機材トラブルのため、一部車輌の写真を掲載できなかったことをお詫びいたします。 [写真提供/TEAM車輪村] [ライター・カメラ / 野鶴美和] [取材協力・写真提供 / TEAM車輪村]
6月7日、8日の2日間に渡って、愛知は愛・地球博記念公園(通称:モリコロパーク)にて欧州車の祭典「ミラフィオーリ」が開催された。 「ミラフィオーリ」は欧州車オールジャンルのイベントであり、年式は問わない。 新車から戦前車(来たのを見たことはないが)まで参加が可能なイベントだ。毎回さまざまな車輌が参加しモリコロパークを彩っている。今回は初の2日間連続開催となる。 ■ミラフィオーリはなぜ2日間になったのか? 多くのイベントは基本1dayがほとんどだ。それは個人、企業主催に関係なく仮に2日間と思えていても、実際には会場入りが前泊ということで2日に感じたり、その“おまけ”や前夜祭的に行われていたりと、どこか付随感があった。その点、ミラフィオーリではしっかり丸2日間だという。それはいったいどういうことだろうか? 会場であるモリコロパークは、もともと愛・地球博という万博の会場であった。それが今年20周年を迎えるにあたり、愛・地球博20祭と称して毎週末イベントを行うという。開催期間と同じく3~9月の間、毎週末イベントを行うと県の関係者が決めた。ただ、毎週行うには関係者だけの企画では行き詰ってしまう。そこで過去にイベントを行ってきた方々の協力は必須であり、ミラフィオーリ事務局(チンクエチェント博物館)にもそのひとつとして打診があった。 毎年行っている側としては快く引き受けたものの、条件には「2日間の開催」が加わっていた。では2日間で何を行うのか?そう考えたときにせっかく向こうから打診があったのだから、この機に普段できないようなことを提案してみようということになった。それが愛知県庁からモリコロパークの会場までをラリー形式で走る「ドライブラリー」だ。 当初は改修が終わった愛知県庁本庁舎の正面玄関ロータリーから出発の予定であった。しかし、残念ながら改修工事が予定どおり終わらず、急遽同県庁の西庁舎からスタートとなった。予定外の事態はあったが、公の場でのドライブラリーが行われた事実は、まぎれもなく新たなミラフィオーリの歴史となったことだろう。 ■変わらぬ会場の雰囲気 会場には、2日間であわせて400台を越える車輌が集まった。参加車輌には最大勢力であるフィアット500(アバルト含む)を中心に各欧州車が整然と並ぶ。ポルシェ、BMWを中心としたドイツ勢や珍しいところではVWのUPGTiが参加していた。 また近年の参加車輌で興味深かったのは、現行ジャガーの参加だ。親会社の関係上、はたして英国メーカーといっていいのかは異を唱える向きもあるかもしれないが、新しいモデルが参加してきたことが素直に喜ばしかった。 今回ドライブラリーに出走している関係で、初日の解説役をすることができない自動車ライター嶋田智之氏に代わってマイクを握ったのは、Youtubeチャンネルで中部地方を中心に活躍をされているGo carの新車情報のキャスターGocar氏。おなじみの嶋田氏とチンクエチェント博物館館長である深津氏の掛け合い解説に替わって大役を務めていた。 ■謎のカバーの車輌の正体とは? 本部テントの前には、トリコロールカラーのベールに包まれた謎の車輌が展示されていた。様子から察するに、ドンガラのホワイトボディそのままの車輌は、今回の会場の大きなテーマである愛・地球博20祭を象徴する展示車でもあった。 イベント開催の挨拶とともにアンベールされたフィアット500は乳白色に塗装され、表面には細かい粒がちりばめられている。実はこのクルマこそ、20年前に愛・地球博でイタリア館においてホワイトチョコレートでコーティングされ、展示されたクルマそのものである。さすがに当時と同じようにチョココーティングで展示すれば、この天候であっという間に溶けだしてしまう。そのため、当時の色味に近い白色で塗装をしているそうだ。 ちなみに細かい粒はいったい何だったのか?正体はヘーゼルナッツなどのナッツ類。当時の再現とはいえなんとも芸の細かいことである。 ■最大勢力を深堀してみる 普段のイベントでは珍しい参加車輌やバブルカーなどのクルマについ目が行きがちだが、20祭の主役とも言えるチョコレートフィアット500を踏まえて今回は最大勢力であるフィアット500を中心に少しじっくりと見て回らせていただいた。今回はいつも以上に見ごたえのある車輌が参加していた。 なかでも会場の正面に置かれたBMWのM1やクラウザードマーニなどはその最たるものだろう。アルファ ロメオのRZが2台もいる光景などクラブイベントでもなければまず見ることなどない。だからこそ最多参加台数のフィアット500の中にも訳ありなクルマはいるはずだと、他になさそうな雰囲気をもった500を選んで話を聞いてみた。 ■戦闘機?F15をモチーフにした嘉手納帰りのアバルト500 薄いグレーに米軍機の徽章のアバルト、モチーフは戦闘機のF15。エアロパーツメーカーであるリバティワークスで企画があり、自車を持ち込んでのカスタムを施した車体。完成後は実際に沖縄の嘉手納米軍基地に持ち込んで、F15戦闘機とのツーショットを撮影している。 ■気がつけばステッカーの嵐、アジップロゴが紡ぐアバルト500 FIAT500、アバルトを通じて最多のデカール数を誇る1台。このクルマには元となる車輌が存在しており、購入当初は大きなアバルトのデカールのみだったとのこと。知り合った元となるクルマのオーナーから、少しづつ同様に仕上がるようにデカールを供与してもらったという。もちろん細部は違うそうなのだが、2台並ぶとどちらが自分のクルマかわからなくなるほどだったという。現在、元の1台は色替えをしたため、それを引き継いでずっとこのデカール(アジップ柄)で行きたいと話してくれた。 ■そして次へ 2日間にわたって開催された愛・地球博20祭コラボイベントのミラフィオーリ。初の試みがいくつも散りばめられ、初めて尽くしの開催だった。主催者はじめ多くのスタッフが初心に戻って動き回ったイベントだったのではないだろうか?来年の体制やエントリーをいま語るのはやや無粋かもしれない。それでも筆者は次回を、そして次の20祭としてのミラフィオーリを期待している。 [ライター・カメラ / きもだこよし]
2025年5月25日、埼玉県の某所で開催されたイベントがある。1990年代の車輌を中心に集められたカーイベント「第6回東京キューマルミーティング」だ。 今回で7回目を迎える「キューマルミーティング(主催者によると、過去に臨時で開催したことがあり、それは"2.5回"と銘打ったそうだ)」は、1990年代に生産されたクルマを集めたイベントだ。 エントリー条件は年式のみで、国産、輸入車を問わず参加が可能。ただし、(条件ではないのだが)会場がシークレットとなっている。 ■秘密の会合へようこそ こう書くと、まるで秘密裏にこっそり行う集まりのように聞こえてしまうが、前述のとおり、参加者以外には会場を明かしていないという意味合いだ。実際は至ってポピュラーなカーイベントである(実際に筆者も取材の旨を打診するまで会場を知らなかった)。 イベントの参加者はエントリーフォームから参加の表明を行い、必要事項を記入して送信すると、主催者側から返信の連絡とともに会場の場所が伝えられる。何やら背徳感溢れる秘め事のお誘いのように書いてしまったが、実際にはトラブル防止や安全対策の一貫で行われた予防措置的な参加申込がその理由だ。 主催者にそのあたりを伺うと、近年カーイベントで開催場所をオープンにしてしまうと参加枠以外の車輌が見学者として会場に来られる。それ自体は何ら問題はないのだけれど、なかにはこちらの基準を満たさない車輌(極論車検が通らないようなクルマ)も現れてしまう。そうしたクルマを未然に防ぎ、なおかつ飛び入り参加の車輌が来ることもない。さらに、参加者全体の把握もできるので、このような手法をとっているそうだ。そうしたことからも、参加者が安心して親睦を深めることができるという。 ■なぜ90年代に惹かれたのか? 参加している方たちの年齢は、ざっと見るだけでも相当に若く見える。実際筆者が話をうかがった方々にそれとなく聞いた年齢も、30~40代が主流であり、おそらくは20代の方もいたのではないかと思われる。そんな彼らがどうして免許も取得できない年齢の時分に生産されたクルマに惹かれたのだろうか?幾人かに伺うと、大きく分けて2つの答えが挙げられる。 ひとつは年配である筆者たちにもあることだが、自身の現体験に基づいていることが多い。子どもの頃自宅にあった。親が乗っていた。自動車ショーで見て憧れた。そういった類いのものだ。なかには親から引き継いでのツーオーナー(ワンファミリーカー)として大事に乗られている方もいる。 もうひとつは、技術的な意味での安心感からスタイル等に惚れ込んで乗る人だ。技術的、つまり整備性やメカニズムの見地から、部品が80年代以前のモデルよりも比較的用意に手に入ったり、現行の車輌よりも技術的に複雑すぎたりしないので、余計な心配がない。余計な心配とは何だろう?と思い、詳しく聞くと、現代の車輌はとかく表示が出るとエンジンが始動しなくなり、だましだまし動いたり様子をみるという余地がないからだという。 確かに最近はエンジンフォルトの表示が出たら動かすなさわる何もするなとディーラーからいわれてしまう。昔はもう少しゆとりがあったようにも思われる。もちろん本来は動かさず工場で調べるのが一番なのだが、診断方法がテスターのみでユーザーからの話でメカニックが当たりをつけるといった部分は最近ではほとんど見聞きしなくなってしまった。そう考えると彼らは工業製品というより、血の通った人どうしの温もりのようなものをこの年代のクルマに感じているのかもしれない。 ■「キューマルミーティング」参加車輌をピックアップしてみた そんな人肌的な暖かさを感じさせるこだわりで手に入れたクルマ達をいくつかご紹介したい。 ●トヨタ カローラ セレス(E100) 購入して1年くらいはそのまま寝ていたという。まだ車内のビニールも残っている車体だが、屋外でずっと置かれていたクルマだったそうだ。そのため外装の痛みは激しかったそうだが、元々の色味が気に入っていたこともあり、同じ色で再塗装を行っているという。 ●ホンダ ステップワゴン(RF1) オークションで購入したワンオーナーカー。この初期型指定で代行にお願いしたという。頼んだお店がビートなどをメインに扱うお店だったらしく、お店の人からもなぜこのクルマをわざわざ指定で?と驚かれたらしい。オーナーはこのスタイルに惚れ込んで買ったので、今は機関関係を直しつつ、この実用車としての機能美を楽しんでいるとのことだ。 ●トヨタ カローラ レビン(AE111) 新車から乗られているという。親が乗っていたものを譲ってもらい、自身が引き継いで乗っているという。実はもともと乗られていたのはお母様。なんと歴代すべてがMT車というなかなかのツワモノだ。そんなお母様から引き継いだレビンだが、この新車時からただの1度も車検は途切れていないというから驚きだ。今もって現役で走り続けるワン(ファミリー)オーナーカーだ。 ●日産 キャラバン(E24) 主催者が乗りつけた2台目のクルマ。本日ダブルエントリーで乗りつけたうちの1台で、ご自身は同じく日産のW30ラルゴで乗り付けていた。こちらは友人に運んでもらったという。過去にも同じE24のキャラバンを乗られていたが、その後さまざまな車輌を乗り継ぎ、ふと足車に再びこのキャラバンが欲しくなり、手に入れたという。商用ナンバーであるにもかかわらず、とても綺麗な状態で残っていた1台で、バンパーも塗装ではなくプラの地そのもの。会場に訪れた人にももう少しこの良さに気づいてほしいと話していた。 ■キューマルミーティング主催者に聞く「90年代車の魅力」とは? 主催者である潤也さんは、いったいなぜこの90年代に惹かれたのだろうか?日産のワゴン2台体制で参加している潤也さんは、過去にはGX-81型のトヨタ マークIIにも乗られていたそうだ。 今ではラルゴとキャラバンの2台体制でどこにでも出掛けるという。元々キューマルミーティングの発祥も、九州で開催されていた福岡キューマルミーティングに感銘を受けたことから関東でもやってみたいとはじめたそうだ。 90年代のクルマというカテゴリーに魅力を感じるのは、自身で手を入れられる余地のあるところだと潤也さん考えている。また、ここまでがクルマに必要なものがすべて揃った最高の時代だったのではないかと考えてもいるという。 潤也さんは「この年代のクルマって本当に贅沢にしっかりと作られているじゃないですか。ここから先ってどんどんコストカットや簡略化が進んで、同時に走らせることに必要以上な装備が増えてしまった気がするんですよ」と、90年代車の魅力を語ってくれた。 確かに90年代にはパワーアシストやABS、4WDをはじめ、快適装備いわゆるエアコンやオーディオもすべてある。その後にナビは出てきたが、バックモニターや警告センサーなどはアップデートに過ぎない。ましてや、駐車アシストや自動運転などはもはやアシストの域を越えたものといえるかもしれない。それらのシステムが安心安全を提供する代償に、ドライビングという人が担う根幹を人の手から離して行きつつあるのも21世紀の自動車事情とも言えるだろう。 まだまだ発展を願うキューマルミーティングだが、この日もすでに90台近い参加車輌が集まっていた。前回のイベントで雑誌紹介をされたことも宣伝効果になっているのでは?と潤也さんは話す。 すでに堂々の規模のイベントだが、主催者としては常連メンバーが増えて欲しいとのことだ。新期や1回とか2回の間を開けての参加者はいるのだが、常に来てくれている参加者がもうひとつ少ないとのこと。 勝手のわかる常連さんがいれば、より初参加の方も目安や参考に出来るのかもしれない。多くの参加者が口にした、人との親和性がもっとも感じられる車輌が登場した90年代。そう考えると90年代もとい20世紀というのは、人とクルマがもっともいい関係を結べた、あるいはクルマが幸せだった時代なのではないだろうか? [ライター・カメラ / きもだこよし]
2025年5月11日、埼玉県川越市を舞台にした初のクラシックカーイベント「小江戸川越まちかどモーターギャラリー」が開催された。 参加条件は、国産車および輸入車を問わず1975年までに製造されたクルマであること。初開催となる今回は、70台を超えるクラシックカーが川越の街に集結した。 個人的な話で恐縮だが、川越の街は幼少期から慣れ親しんだ場所でもある。1970年製の古いクルマを所有する筆者も、いち参加者としてエントリーしつつ、初開催となるイベントを取材してみた。 ひとまず、A〜Fの6つのエリアに展示された国内外のクラシックカーを可能な限り撮影してきたので、ご紹介していこう。 ■A:蓮馨寺エリア 西武新宿線本川越駅から750m、徒歩10分ほどのところにある「蓮馨寺(れんけいじ)」には、プリンススカイラインや、いすゞ117クーペ、「ヨタハチ」ことトヨタ 800などの国産車を中心にメッサーシュミットやフィアットアバルトを展示。 このエリアには物販コーナーやフードコーナーもあり、観光で川越を訪れた人もふらりと立ち寄れるのが魅力。「GTroman」でお馴染みの西風先生のサイン会も開かれた。 ■B:大正浪漫夢通り&連雀町繁栄会エリア 中小企業庁の「がんばる商店街77選」にも選ばれている川越市内7商店街のひとつでもある大正浪漫夢通り&連雀町繁栄会エリアには、イギリス車やイタリア車を中心に展示した。 鯉のぼりが5月18日まで掲揚されていたこともあり、クルマ好きだけでなく、偶然立ち寄った観光客も撮影せずにはいられないほどの光景が広がっていた。 個人的にはここが「映えスポット」としてもっとも画になったエリアに感じた。なかにはスケッチブックを片手に絵を描いているギャラリーもいた。また、丸徳商会ブースでは全日本ラリー選手権に参戦中のハイエースのラリーカーが特別展示され、こちらも注目を集めていた。 ■C:コエトコエリア 大正浪漫夢通り、連雀町繁栄会エリアから少し奥まったところにある「コエトコ(正式名称は川越市文化創造インキュベーション施設)」は、川越市指定文化財にもなっている、2024年4月にオープンしたばかりの施設だ。 ここには、ダイハツミゼットやマツダ ポーターキャブ、ミニ トラベラーなど、懐かしいはたらくクルマたちを展示。あまりにも画になっているので、このまま常設展示して欲しいと感じたほどだ。知らない人が見たら、映画のワンシーンのように、クルマと風景が見事にとけ込んでいたのが印象的だ。 ■D:りそなコエドテラスエリア 蔵づくりの街並み沿いにある「りそなコエドテラスエリア」には、マクラーレンMP4/4をやブラバム BT16Aをはじめ、懐かしいホンダ車を中心に展示。 いまや伝説のドライバーとなったアイルトン・セナがドライブしたF1カー(1988年ベルギーGP優勝車)が間近で観られるとあって、常に多くのギャラリーが、懐かしいMarlboroカラーのF1マシンを撮影していた。 ■E:本丸御殿エリア りそなコエドテラスエリアから徒歩で15分ほどの位置にある「川越城本丸御殿エリア」では、2014年にこの世を去った、モータージャーナリストの故・川上完氏が所有していたという「ブリストル406」や、ロータスのワークスマシンである「Mk8」を特別展示。 嘉永元年(1848年)に建てられたという川越城本丸御殿と、異国の地で造られたジャガー、シトロエン、ポルシェ、BMWなどの名車が不思議なほどしっくりと馴染むことに驚いた。 また、フェラーリF40やランボルギーニカウンタックLP400といった、時代を超えて憧れの存在であるスーパーカーも特別に展示され、会場の雰囲気をより一層華やかなものにしていた。 ■F:川越市立博物館エリア 本丸御殿エリアの向かいにある「川越市立博物館エリア」には、シボレーコルベットやキャデラッククーペといったアメリカ車やフォルクスワーゲンビートル、カルマンギアなどを展示。 個人的に驚いたのは、アルファ ロメオ F11が展示されていたことかもしれない。なかには「初めて観た!」と興奮気味にスマートフォンで撮影しているクルマ好き(・・・であるに違いない!)がオーナーと談笑していたり・・・と、終始和やかな雰囲気に包まれていた。 ■イベントも盛りだくさん 午前中の開会式の盛り上げに一役買った地元の和太鼓チーム「響」の演奏が午後からは本丸御殿エリアでも行われた。本丸御殿をバックに、子どもたちの力強い演奏とクラシックカーの共演にギャラリーも感激していたようだ。 また、大正浪漫夢通り&連雀町繁栄会エリアではジャズのミニライブも行われたほか、その他にも、甲冑姿の武士がいたり、着物美人と愛車の撮影会が開かれるなど、オーナーはもちろん、来場者を喜ばせるホスピタリティあふれる企画が満載であった。 ■まとめ:「小江戸川越」の立地を最大限に活かしたイベントはひと味もふた味も違うゾ! 仕事柄、筆者もさまざまなクルマ関連のイベントを取材している。施設の駐車場などを貸し切り、参加者同士が楽しむイベントがあるいっぽうで、商店街や観光地の一角に展示スペースを設けて、偶然居合わせた観光客でも楽しめるスタイルのイベントもある。今回はあきらかに後者だ。 川越の街並みに映えるクラシックカーを展示し、さらにはオーバーツーリズム対策を考慮してエリアを分散させる。さらにはただ単にクラシックカーを眺めるだけでなく、マニアから一般の人まで、さまざまな視点で情景も楽しむことができる。 筆者自身、このイベントがなければ歩くことがなかった(気がつかなかった)場所がいつくもあり、新たな発見となったことは確かだ。近々、散歩がてら川越の街を改めて散策してみるつもりだ。 事実、家族連れからご近所に住んでいると思しき高齢者のご夫婦など、さまざまな人が行き交い、普段なかなか目にする機会がないクラシックカーを間近で眺めたり、スマートフォンで撮影している光景をあちこちで見掛けた。 企画からイベント開催までおよそ1年の歳月を費やしたそうだが、行政との調整や安全面および来場者の回遊、クラシックカーの配置など、細部にいたるまでさまざまな協議を行ったことがうかがえた。まさに、小江戸川越の立地を最大限に活かしたクラシックカーイベントといえるだろう。 ・・・とはいえ、事前に企画を煮詰めに煮詰めても「実際にやってみなければ分からない」ことが山ほどあったはずだ。無事に初開催を終え、今後の課題が浮き彫りになった点をブラッシュアップしていくことで、よりイベントの魅力が増していくに違いない。 参加者だけでなく、観光客や地域の人たちの目も楽しませてくれるクラシックカーイベントは貴重だ。 主催者の方に話を伺ったところ、一般的なオーナー中心のクラシックカーイベントではなく『美術館の作品を散策するイメージ、そしてクルマに興味がない方々や興味をもつきっかけとなっていただくこと』をコンセプトに企画したのだという。イベントの名称が「まちかどモーターギャラリー」なのも合点がいく。 つまり、今回展示されたクルマは、小江戸川越の街を舞台にしたクラシックカーを愛でる「1日限定の屋外鑑賞会」というわけだ。 小江戸川越の魅力をより多くの人たちに発信するためにも、今後も「小江戸川越まちかどモーターギャラリー」が継続して開催されることを心から願うばかりだ。 ●公式サイト 小江戸川越まちかどモーターギャラリー公式サイトhttps://www.coedo-mobile.club/ [撮影&ライター・松村透 / Special Thanks・中尾博 & 中込健太郎 ]
2025年5月11日、ゴールデンウィーク明けの最初の日曜日に、茨城県常陸大宮市美和センターにて旧車が集まるイベント「第7回旧車(Old Car)祭り IN 美和」が開催された。今回で7回目を数えるイベントだ。 参加条件は1990年までに生産が開始された車輌(2輪車含む)であること。特段トリッキーな条件があるわけではない。ただ少しばかり特徴があるイベントだった。なにがだろう? イベントそのものは遠目には変わっては見えることは特にない。特段特殊なカテゴリーや珍しい車輌の参加があるわけでもない。しかしながら会場を1台ずつ見ていくとなにかが違っていたのだ。 ■第7回を数える「旧車(Old Car)祭り IN 美和」、その活動は市長もあいさつに登壇するほどに育っている 「旧車(オールドカー)祭り IN 美和」は、国産旧車がメインのカーイベントだ。参加条件の"シバリ"は年式のみなので、欧州車やアメ車であっても参加が可能だ。 地域性もあってだと思うのだが、やはり国産勢が強い。特徴があるとすれば、旧車でもとりわけ小型枠のクルマが多く目立つ。小型といっても5ナンバー枠ということではなく、旧軽自動車枠のいわゆる小さなナンバープレートを付けたクルマだ。 車種でいえば、スバル360やスズキ フロンテクーペのようなクルマである。もちろんスカイラインやフェアレディZといった車輌も参加はしている。欧州車でいえば本部脇の駐車スペースにはフェラーリのF40も参加しており、安全のためにパイロンが置かれていた。 ■普通なようで普通でない とはいうもののどこか妙だ。会場内に整列するイベントの参加車輌に奇妙な違和感を憶えつつゆっくりと見渡す。小型車輌が多く参加しているイベントだなと思いはじめた頃からだった。それは次第に確信に変わっていった。そういつもとは違った意味で珍しい車輌たちとの出会いになっていく。 ■クセ者ぞろいの参加車輌たち 会場に入ってすぐのところに黄色いフロンテSS。フロンテとしては2代目にあたる。私見だが、あまりイベント会場でお見かけしない車種ではある。決していないわけではないだろう。ただ同じスズキの車輌なら圧倒的にフロンテ「クーペ」の方が見かけるという話である。 そこで冷静になって見渡すと、主催者が乗り付けたのは三菱ギャランΛ(ラムダ)、欧州車枠で参加のMG-BはオープンモデルではなくGT。インタビューで国内唯一の登録車輌ですと話していた左ハンドルのスカイラインは、4気筒モデルのGLである。 これだけ列挙していけば何となく想像がついてきたかもしれない。そう、珍しい車輌ではないがどれもがどこかクセのある、クセ強車輌が集うイベントなのだ。 正直王道を外したクルマが来るイベントを観たことは読者にもあるだろう。しかし、ここまでクセの強いクルマが、それもその多くが地元ナンバーで構成されたカーイベントはあまりないかもしれない。 今回そのクセのある今までどこに眠って(生息して)いたのだろう?と思ってしまう。そんな車輌たちをいくつかご紹介したい。 先ほどの4気筒のスカイライン。記録によるとこのクルマ以外は登録がされてないとのこと。故に国内登録がただ1台ということだ。 こちらは日産セフィーロ。確かに最近ほとんど見かけないと思うかもしれないが、一見フルノーマルなこのクルマ。確かにフルノーマルなのだがオーテック製のフルノーマル。ワンオーナーでもう20年以上所有しているとのこと。唯一ノーマルでないのがシート。本来は本皮シートが入るのだが、走る際に体が滑ることを嫌ったオーナーが同型モデルのモケットに交換したのだそう。 こちらは、マツダ323ことファミリアGT-R。こちらは他府県よりのエントリーだが、Gr.Aのカテゴリーで出走するべく作られたWRCマシンのベースモデルだ。セリカやランチアデルタは割りと見掛けるが、こちらは意外と目にしないクルマではある。ハンドリングマシンといわれた323は総合優勝こそなかったものの、Gr.Aでも好成績を上げてマツダの知名度を上げることに貢献した。 前述のフロンテSSもそうなのだが、同じフロンテでもGT/Wが仕上がった状態で見ることができるのはここだけなのかもしれない。フロンテクーペと同時期に発売されたモデル。ちなみにこのモデルから水冷エンジンになっている。 欧州車勢からはこちらのMG-B。あまり見ないクーペタイプのGT。基本スペックはオープンモデルと差はないが、GTは140㎏ほど重くなっている。 ■まだ出会っていない1台がここにある 多くのカーイベントでは高額の車輌や素晴らしいデザインのクルマ、そして貴重なモデル等に目を奪われる。それは筆者とて同じである。 しかしながら、この常陸大宮市の一角で行われたイベントは少しばかり異なっていた。かつては当たり前にいた車輌たち、半世紀ほど昔には街中を走り回っていた車輌たちは、その多くが世代交代とともに世の中から消えていった。そんなクルマ達を茨城の人たちはときに大事に、時に思い出して直しては今に存続をさせてきた。美和地域はそうしたクルマ達の集まったいわばひのき舞台なのである。 スポーツカーや特殊な競技モデルのベースなどは後世に残りやすい。名車などと呼ばれるのはそれゆえである。だがベースグレードのクルマや主流からは少し外れたクルマなどは、そうした対象からは外れやすいものだ。 そんなクルマを大切に維持するオーナーが集まるイベント、それが「旧車祭り IN 美和」なのかもしれない。 あなたがもし名の知れた名車がずらりと並ぶイベントを見飽きたと思いはじめたのであれば、ぜひ森に囲まれた地域センターのイベントに訪れてみてほしい。きっと「まだ生きていたんだ」と思える1台に出逢えることだろう。 [ライター・カメラ / きもだこよし]
2025年4月11日〜13日にかけて、幕張メッセで開催された「オートモビルカウンシル2025」の模様を取材した。 今回が記念すべき第10回目の開催となるオートモビルカウンシル。今回のテーマは『クルマを超えて、クルマを愉しむ Classic Meets Modern and Future(クラシック ミーツ モダン アンド フューチャー)』だ。 文字にするとサラッと読めてしまうが、これだけ大上段に構えれば、主催者自らが高いハードルを課していることが分かる。・・・と同時に、来場者の期待値だって否が応でも高まる。肩透かしを食らったら来年からは足を運んでもらえないことだってある。イベント主催者のプレッシャーも相当なのものがあったと思う。 ●オートモビルカウンシル 2025出展社一覧(2025年4月9日現在) ・日本車メーカー・インポーター・新世代自動車:9社・スポンサー:10社(うち出展6社)・特別協力スポンサー:2社・協力:1社・サプライヤー:5社・プレミアムライフスタイル:8社・ARTCOUNCIL:8画廊・2輪・3輪:1社・ヘリテージカー販売店(含SUV販売店):37社・自動車関連商品等販売店(マルシェ):39社・オーナーズクラブ:4団体・フード・ドリンク:7店舗 展示車両台数186台、出展者数は過去最多の131社、自動車関連商品等の販売店(マルシェ)が39社、オーナーズクラブが4団体、フード・ドリンクのコーナーが7店舗。そして来場者数も過去最高の44,963人となった。さらに、会場の規模が拡大され、幕張メッセ9-11ホールの3ホールを使用したのも今回が初となる。 イベント初日の特別内覧日というと、来場者は報道関係者が中心で比較的落ち着いているイメージがある。しかし、今年は違った。入場待ちの長い列ができており、例年以上に来場者の熱気と期待が伝わってきた。 ■ジョルジェット・ジウジアーロ氏の来日に合わせ、彼の代表作10台の展示 今回の最大のハイライトといえば、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がこのイベントのために来日したことだろう。トークショーは満員御礼。筆者も場内を駆けまわるうちに、気づいたときにはステージのまわりは人だかり。空いている空間を見つけるのも一苦労であったほど。おそらく、本物のジウジアーロ氏をこの目で見たいがために会場へ足を運んだ人も多いはずだ。 筆者の記憶では、ジウジアーロ氏ご本人を観る機会に恵まれたのは、2013年フォルクスワーゲン ゴルフ7のプレス発表会発売でお見掛けしたとき以来だと思う。1938年生まれのジウジアーロ氏は御年86歳。年齢を感じさせないほどエネルギッシュで、どこか少年ぽさを感じさせる笑顔が実に素敵な方だ。 トークショーは4月11日と13日の2回。11日に開催されたトークショーのテーマは「 “A Young Talented Designer was Born” 才気あふれる若きデザイナー誕生」。画家の家系に生まれたジウジアーロ氏の生い立ちから、17歳でフィアットが設立したデザインセンターに入社した経緯。そしてベルトーネ社を経て、1967年に30歳の若さでイタルデザイン社を起こした経緯などを語ってくれた。 当日、会場を訪れた人のなかにはジウジアーロ氏のファンだけでなく、同氏がデザインを手掛けたモデルを愛車にしている人も来場していたのだろう。「ジウジアーロ氏の生の声を聞き、同じ空間に居る」ことへの充足感・満足感に浸っている人も見受けられた。 ■今回も見みどころ満載だった企画展 ジウジアーロ氏の来日にあわせて、Giorgetto Giugiaro展「世界を変えたマエストロ」と題して、同氏が手掛けた10台の名車が展示されたほか、THE GOLDEN AGE OF RALLY IN JAPAN <歴史を飾ったラリーカー展示>のテーマに沿って6台の懐かしいラリーカーがずらりと並ぶ姿は壮観のひとことだ。 ●Giorgetto Giugiaro展「世界を変えたマエストロ」展示車輌 ・アルファ ロメオ ジュリア スプリント GT ・マセラティ メラク SS ・フォルクスワーゲン ゴルフ ・BMW M1 ・いすゞ アアッソ ディ フィオーリ ・ランチア デルタ ・フィアット パンダ ・DMC デロリアン ・イタルデザイン アズテック ・バンディーニ ドーラ ●THE GOLDEN AGE OF RALLY IN JAPAN <歴史を飾ったラリーカー展示> ・フィアット X1/9 アバルト プロトティーポ ・BMC ミニ クーパーS ・ランチア ストラトス HF ・フィアット アバルト 131 ラリー ・ルノー サンク ターボ ・アウディ クワトロ 各国産車メーカーも、トヨタは歴代スープラを中心に、第28回東京モーターショー出展車両として当時注目を集めた「4500GT」を展示。そしてホンダは歴代プレリュードを展示。 またマツダは「MAZDA DESIGN STORY “心を揺さぶる、モノづくりへの追求”」のテーマとともに、若きジウジアーロ氏がベルトーネ社に在籍中に手掛けた初代ルーチェのプロトタイプをはじめ、ユーノス500や過去の東京モーターショーに出展したコンセプトカーを軸に展示。三菱は「時代を切り拓いてきた名車たち」のテーマを掲げ、東京モーターショー出展車「HSR-II」をはじめとする懐かしいモデルを展示した。 そして特別展示として日産はプリンス スカイラインスポーツ(1960年トリノ国際自動車ショー出展車)をはじめ、ダットサンブルーバード 1200 デラックス(スタイリング原案はピニンファリーナ)、ニッサン マーチ コレット(スタイリング原案:イタルデザイン社)、GT-R50 by Italdesign(スタイリング原案:イタルデザイン社)と、蒼々たる顔ぶれとなった。 ヘリテージカー販売も好調だったようで、早々に「商談中」や「成約済」の商品車を見掛けた。なかには自走して会場入りしたクルマもあるだろうが、多くはトランスポーターに積まれてここまで来たのだろう。 また、タミヤブースでは「タイレル P34」が展示されており、その場でハンドメイドタイレルを製作した綿引氏といつも取材に同行してくださるI氏にも連絡して、画像と動画を送りまくってしまった。こうしてオリジナルを間近で眺めていると、改めて綿引氏が手掛けたハンドメイドタイレルの再現性に驚かされる。いつか、オリジナルとハンドメイドタイレルを並べた光景を見てみたいと思う。 タイレルP34を追え! https://www.qsha-oh.com/historia/category/tyrellp34/ ■まとめ:仕事を忘れそうになるほど夢中になった クルマ好きの友人知人にもよくいわれるのだが「(こういったイベントに)仕事で行けていいね」とうらやましがられることも少なくない。かつての自分もそうだった。東京モーターショーのプレスパスが初めて発給されたときのうれしさはいまでも忘れられない。 オフィシャルでイベント会場に足を運べる反面、失ったこともある。イベントを楽しむことがまったくできなくなってしまったのだ。ジウジアーロ氏のトークショーのことも忘れてしまうほど「撮れ高」を求めて会場内をひたすら歩く。あとで確認して驚いたのだが、この日の歩数も24,000歩を超えた。 今回、取材に入る前に会場内を練り歩いてみようと思い、各ブースをチェックした。ひととおりサラッと観た時点で仕事を放り投げたくなった。ここまで純粋にこのイベントを楽しみたいと思ったことはいつ以来だろう・・・。はるか昔、高校時代にわざわざ始発電車に乗って行った東京オートサロン以来かもしれない。 名車がずらりと並べられ、懐かしいクルマが商品車として展示されているとはいえ、間近で眺めることができる。普段ならネット上で探しているようなグッズが所狭しと並べられている。仕事ではなく、いちクルマ好きとして心からオートモビルカウンシルを楽しむことができた。こんな感覚は久しぶりだ。 これこそが10年という、短くて長い歳月を掛けて少しずつ熟成を重ねつつあるこのイベントのカラーなのだろう。過去の記事でも書いたような気がするが「鑑賞」という表現がふさわしい。成熟した大人のためのクルマのイベントなのだと思う。 イベント初日の特別内覧日(3000枚限定)の前売りが9,500円、当日券が10,000円。そして一般公開日の前売りが6,500円、当日は7,000円という価格設定は正直いって高い。その代わり、学生(中・高・大・専門)は2,000円に抑えられている(※小学生以下は保護者1名につき1名まで無料)。この高めのチケット価格にも臆することなく、会場へ足を運ぶ人たちの客層がいいのもこのイベントの重要なポイントだと思う。 今回のテーマ『クルマを超えて、クルマを愉しむ Classic Meets Modern and Future(クラシック ミーツ モダン アンド フューチャー)』は伊達ではない。よくぞここまでの名車を集めたものだと思う。そして、日本発のクルマイベントとして世界に誇れる充実したプログラムだと思う。 次回からは新たなステージに足を踏み入れることになるであろうオートモビルカウンシル。次回の日程は、2026年4月10日(金)から12日(日)の3日間の日程で幕張メッセで開催を予定しているとのことだ。 唯一無二であろうこの空気感が、これから先も少しずつ熟成を重ねつつ、日本が世界に誇れるクルマのイベントとなってくれることを願うばかりだ。 [ライター・撮影/松村透]
去る2025年4月20日(日)、横浜赤レンガ倉庫にてカーイベントが開催された。「YOKOHAMA CAR SESSION2―若者たちのカーライフ―」と名付けられたイベントは、車両の国産、輸入車、旧車のカテゴリーを持たないオールジャンルイベントとして幅広い枠のなかで行われる。縛りごとはただひとつ「年齢」である。 今回で2回目を向かえた同イベント、参加資格が35歳までの若者に限るというもの。取材をする筆者の年齢を考えるとなんとも耳の痛い資格制限ではある。もっとも、規定以上であっても出店者や協賛者としてであれば参加ができる。 それにしても思い切ったレギュレーションだ。とはいえ、考えてみれば多くのイベントで主催者としてお会いする多くの方々は、いい年齢であったりすることがほとんどだ。それであってもそうした主催者もかつては若手であったはずなのだ。そう、世にいうオヤジたちは追いやって自分たちが立ち上げてやる。そんな若者3人が中心になってはじめたのが「YOKOHAMA CAR SESSION」なのだ。 彼らは過去にも若手中心で行うカーイベントを行い、旧い欧州車などを自分の足として走らせてきた。その経験が実を結んだイベントともいえるだろう。実際出展しているカーショップや自動車関連企業の方々も彼らを子どものころから知っているので、半ば親目線のように見守り出展されている方もいる。 ■過去を振り返り、現代を見て取る 会場にはイベントタイトルの描かれた幕を横目に主催者の車両3台が並び、そこから左右と後方に参加車両が広がっているその数実に140台以上!これが若さか・・・。 開催は9時からとなっていたのだが、筆者が入場の画を撮りたいと早めに現地入りしたにも関わらず、すでにかなりの台数が整列していた。そのバリエーションも、いわゆる旧車をはじめとして、ネオ・クラシックと呼ばれる80年代後半から90年代の車両を中心に新車の高級車に至るまでと多種多様だ。 筆者の時代には20年以上前のクルマなどかなり意を決して購入しないととても所有できなかったものだが、最近はなかなかに思い切った買い物ができるようだ。これには過去と現在の環境の違いもあるのかもしれない。 今の彼らの年齢のころ、筆者たちの周囲にある旧車と呼ばれるクルマはキャブ車であったり、エアコンなどは皆無なクルマも多かった。ましてや今の旧車レベルの年代といえばもはや戦前車ということにもなりかねない。なるほど、そう考えれば90年代の車両が中心の彼らはかつてほどはさまざまな我慢をしながら乗り続けるということは少ないのかもしれない。とはいえ、苦労がないのか?といえばそんなことはなく、もちろんかつての我々同様、あるいはそれ以上に苦労をしながら維持に努めていることは想像に難しくない。 ■型にはまらないカーライフ 会場を見渡して感じるのは、筆者のよく知るイベントと「YOKOHAMA CAR SESSION」とでは少しイメージが異なっている点だ。同じオールジャンルでもメーカーや国、車種ごとに並んだりスポーツ色が出る傾向があるといったことが特には感じられない点だ。 というよりは、ミニやシトロエン2CV等の定番車両は数えるほどしかなく、代わりに点在するのが「よくあったな〜」とうなってしまうような珍車やマイナーモデルである。ボルボやサーブが列をなしてやってくるなど、メーカータイアップイベントでもないとなかなかお目に掛かれないかもしれない。 今回はそんなあまりクローズアップされてこなかったであろうクルマの話をオーナーから伺ってみた。 広島から参加のマツダポーター。かれこれ12年は所有しているというオーナーは、このクルマでは初参加になるという。まさかこれで広島から?との問いにフェリーでこちらまで来て自走ですとのことだ。帰路はさすがに今日中に戻るので新幹線で帰宅して翌週に取りに来るという。この意気込みがすばらしい! メタリックのワインレッドが目を引くパルサーEXA。それもキャノピーモデルはどれほど残っているのか?希少な1台であろう。手に入れて5年ほどというオーナーは昔、父親が乗っていたことからその影響だと語ってくれた。もっとも、ご本人が物心ついた頃には、周辺パーツのみが残されていただけだったという。しかしながら、その残った部品はしっかりと有効活用されているようだ。 出展者としてのエントリーだが、とはいえ変わり種に違いないのがこちらのU11型ブルーバードだ。SSSモデルなら“いかにも”なのだがこの個体は「SLX」というスタンダードモデル。購入時は外装も機関もお世辞にもいいとはいい難いコンディションだったそうだ。その状態からコツコツと直して、今では自社のTシャツのプリントにすらなるお気に入りになったという。 余談だが、こちらで出展されていたのは「H2C」というショップのドライバーズウェア。耳慣れない商品だが、話を伺うとウェアの肘や膝の部分にアクションプリーツとでもいうのだろうか、襠(マチ)が付けられており、厚く固い上着であってもステアリング操作がしやすいように加工がしてある。バイク乗りにライダースウェアがあるようにそうしたウェアが一着クローゼットにあってもいいのかもしれない。 筆者も同じクルマに乗っていることもあり、つい声を掛けてしまったのがこちらのプジョー106GTiのオーナーだ。他にもクルマは持っているが、106に乗っているとクルマでつながる交友関係が増えることが多いので楽しいと語ってくれた。 京都から参加されたというルノー19。購入してまだ1年ほどだそうだが、シトロエンVISA(ヴィサ)を所有しながら並行して購入したという。関西に転勤してきた友人から話を持ちかけられて今に至っているとのことだ。トラブルもあるが、とにかく走りが安定感があり、そこが気に入っているという。 会場内にはアストンマーティン ラピードやレクサスLSなども参加していたが、ラテン車のフラッグシップはこの1台だけだったのがアルファ ロメオ 166だ。オーナーはすでに5年も乗り続けているが、いまだにこの細くシュッとしたフロントフェイスが気に入っているとのこと。近年メッキギラギラの押し出しの強いグリルでないところがイタリアンの粋を感じさせる。 ただ塗装が特別色だったこともあり、その回転半径の大きさから狭い道はできるだけ避けるようにしたり、パーキングでは可能な限り他のクルマが来ないよう、遠くにひっそりと停めているとのことだ。 ■かつてそこにあったもの、これから湧き上がってくるもの 多くのイベントで国籍縛り、メーカー縛りや中には同一色の括りで集まるクラブやイベントを見てきたが、「年齢制限付き」のイベントにはは筆者も初めてお邪魔したかも知れない。面白いのはそうした試みから見えてきたこともあると感じている。感じているというのは、筆者はとっくに参加資格を失効した人間である上、それが本当にその通りであるかはわからないからだ。 世にいう「ジェネレーションギャップ」とか「世代間の隔たり」といったものではなく、使うものさしが違うのではないか?そう思わせるのだ。 今回筆者が話を伺ったオーナーのクルマはどこか王道ではなかったり、珍車の域にあるような部分を持つモデルを中心に話を伺った。それは確かだ。しかしながら、多くが定番と呼べるクルマよりも個性が優先されるモデルが多く感じられたからだ。 かつて自分たちはカテゴリーとして求めたのはスピードであったり、ステータスであったり「どこか今、流行ってるね」といった具合に、皆が同じ方向を向きやすい部分があったのではないだろうか。そう思えてならない。 このイベントで参加した彼らはそうした部分にとらわれず「各々が気に入ったから、思い思いに手にしていたら集まった時にこうなりました」の表れに思える。 それが良いか悪いかではない。 筆者の世代は同じ方向を向くことで大きな熱量を発していた。現代の35歳以下の熱量が個々の個性化に熱を帯びているということであるのだろう。 どちらもクルマに掛ける情熱は変わらない。いずれ新世代の彼らが、筆者たち年配側も巻き込んでより大きな熱にしていってくれることを期待してやまない。 [ライター・カメラ / きもだこよし]
2025年2月22日、23日の2日間にわたり、パシフィコ横浜で「ノスタルジック2デイズ」が開催された。 同イベントは神奈川県と横浜市観光協会をはじめ、自動車部品・部品アフターマーケット振興会などが後押しする日本最大級のクラシックカーの祭典であり、今回で16回目の開催となる。 主催はノスタルジックヒーローやハチマルヒーローなどの雑誌で知られる芸文社。会場には日本中から旧車ショップやレストアメーカー、各種パーツを取り扱う企業などが集結。華やいだ空気と熱気があふれていた。 会場内には国産旧車はじめ、アメ車や欧州車などが数多く並び、外周部には貴重なコレクターズアイテムのような車輌やヒストリーを持った車体、あるいはかつてTVや映画で見た劇中車のレプリカなどが整然と置かれていた。 入口からほどなくして柵に囲まれた赤絨毯の上に1台のクルマが置かれていた。型式はPGC10。いわゆるハコスカである。このクルマは実際にレースで使われていた車輌を市販車としてレストア、それゆえ、いたるところに軽量化のための穴がそのまま残されていたり、各所の部品が正規のモノとは違っていたりしたという。塗装も当時純正色であったグローレッドに塗られている(会場パンフレットより)。ちなみに車台番号もかなり早く、50番ということだ。 こちらのクルマは会場の人波をかき分けゆっくりと進む日産バイオレット。走行入場をする「選ばれし10台」の中の1台だ。 ■緑色が映えるレーシングレプリカ 皆さんは1960年代に実際に日本グランプリに出走した「ケロヨン号」というクルマをご存じだろうか?ご年配の方なら思い出すかもしれないが、「あのケロヨン」というキャラクターが由来のクルマであり、1968年の日本グランプリで伊能祥光選手がステアリングを握って日産やトヨタのワークスを相手に戦った車体である。 デルRSBというパイプフレームシャーシに日野コンテッサの5速ミッション、エンジンはセンチュリーのV8 3リッター(3.5Lに拡大とも)を搭載してFRP製の軽量ボディを架装し、仕上げられた車体である。 また同車輌は映画ケロヨンの大自動車レースという作品でも登場している。こちらの映像は今でもDVDとして入手可能とのことだ。ただし、作品中の個体はさすがに本物ではなく、撮影用の車輌と思われる。 ここではそのケロヨン号を可能な限り忠実に再現しようと製作したのだという。もちろんオリジナルの車体はすでに存在しない。また同車輌制作にあたっては原作者の藤城清治氏に許諾を得ている。市販車輌としてナンバー取得ができるようにあえてパイプフレームを止め、トライアンフのシャーシを使用。エンジンはセルシオの1UZ-FE型、それにスバルの5速ミッションを組み合わせる。ノーチラスの古川氏は組み合わせの関係でミッションの後ろが出てしまったから、うまくまとめないといけないと話されていたが、いまから完成が待ち遠しいクルマである。 ■小さめの謎のシート 会場内には車輌に関係した物以外にもウェアやグッズ、もちろん書籍なども展示販売されている。そのなかで少しばかり奇妙な物を見つけた。それがデンモータース(といっても車屋ではない)の「DEN GT SOFA」である。 ハコスカのシートを忠実に再現したリビング家具であり、その製品は日産の監修の下に許諾を受けた確かなものである。しかし、実物のシートと比べていささか小さいのでは?と思い質問をぶつけてみると、そこは本物と同じ仕上げにできないこともないが、あくまでもソファとしての実用性から使いやすい大きさや形状変化をさせているという。 なるほど。昨今の自動車のシートをそのままデスクチェアにするのとは真逆の考えで、形状や縫製を忠実にしながらあくまでもイスとしての実用性を優先するということだ。ガレージハウスの一角でこのソファーにもたれて愛車を愛でるのもアリかもしれない。 ■本物を味わえるビジネス 会場に展示された2台のラリーカー。日産 ブルーバード(510型)と、マツダ サバンナ RX-7(SA22型)。見るからに本物感がにじみ出る車輌に目を疑う説明が。本物のラリーカーの「レンタカー」だという。 いいのだろうか?そもそも、誰とも知れない人間に貸しても大丈夫なのか?ブルーバード510といえばサファリラリー完全制覇の車輌であり、RX-7もクラス優勝とはいえモンテカルロで優勝したクルマである。もし何かあったらどうするのだろう。そんな不安を抱きつつレンタルできる理由訪ねると、ブルーバード510は精巧なレプリカ、RX-7は競技車輌のスペアカーだったそうだ。 それでも貴重な当時の生き証人のようなクルマである。いったいどんな方が借りていくのか訪ねると、主に雑誌関係者やプロのドライバーやレーサーの方が借りに来られるのだとか。現在実質プレオープン状態で本格稼働にはもう少し時間がかかるということだが、興味は尽きない。ちなみにこのときに答えてくれたのは、まだあどけなさが残る男の子。なんとRX-7の関係者のお孫さんだという。自分の物にできるまでこのクルマには頑張ってほしいと明るく話していた。 ■複製はついにここまで 神奈川トヨタのブースで「はじまりに出逢う」と銘打って展示されていた初代クラウン。その後ろではその再生に協力をしたと思われる企業の製品が展示されていた。 多くのパーツが3Dプリンターなどで復刻できる時代。一番やりにくい物はなんであろうか?ガラスである。そして多くの車輌で割れたら後がない部品である。そんなガラスを複製してくれる会社が板橋区にあるTOKYO HOKUTOだ。会場にはトヨタスポーツ800のリアガラスがサンプルとして展示されていた。製品としてもキチンとしており、日本のJISはじめ欧州のE6規格(ベルギー)、北米のAS1などの規格もクリアしているとのこと。 原型となるオリジナルさえあれば車種問わず制作可能ということだ。ただし金額的にはこちらのサンプルで200万くらいは掛かってしまうので、幾人か同志やクラブメンバーなどで希望者を募ってお願いするのが正解だろう(制作枚数が多ければ多いほど1枚単価は下げることができる。上記の値段も20枚ほどのオーダーで行われたものだという)。 ただ少なくとも希少なモデルのフロントスクリーンやパーツなどを万が一失ってもサンプルさえあれば再生できるというのは大きいと思う。 もうひとつ3Dスキャンして複製を作るのとは別に同社の得意とする分野がある。それがメーター修理だ。実はこちらの会社、元々制御基板の会社でありそういった機器には精通している。今回のことでも新規開拓を進めていくうちに神奈川トヨタと出逢ったそうだ。 80年代以前からメーターは電子部品が使われ、故障するとそのままにせざる得ない部品のひとつでもあった。多くは中古部品からのコンバートで直されるが、部品が出なかったり、海外で取り寄せが難しかったりした場合専門店に修理を頼むしかない。しかし、車種に偏りがあったり年式で出来ないと言われたりもすることがある。こちらでは車種は問わないという大変心強い言葉をいただいた。 サンプルに使われているアリストのメーターはじめ展示している場所も神奈川トヨタというだけあり、商談窓口は基本的に神奈川トヨタからお願いしますということだ。ここで思いきって聞いてみたのが欧州車とかも大丈夫ですか?という質問に依頼そのものは全く問題ないと答えをいただいた。メーターや部品の再生でお困りの方、ぜひ一度相談してはいかがだろうか? ■筆者の思うところ ノスタルジック2デイズを振り返って変わらず国産車の展示が圧倒的に多い。その中でもスカイラインは群を抜いて多かったと思われる。 またメーカー別でも日産車は多かったのではなかろうか。ここしばらくの日産の話を耳にするに付け、なんとも皮肉なほどに日産車が人気である。もちろん他メーカーや外車勢も増えている。 これには複製技術や小ロット生産の方法がかなり確立してきたおかげだろうと考える。この先新車に対して新たな車検制度やセンサーシステムの追加によって、ますますランニングコストが増えていくのではないだろうかと思う。 そうなったときにこの先果たして旧車と新車、いったいどちらが維持がしやすくなるのか?もしかしたら旧いクルマの方がよほど安心して維持ができるようなってくるのではないかと思えてしまう。いや、もちろんそんなことはないハズなのだが。 原初のBMWM5と最新のM5。1987年のデビュー時の値段が1,198万円。展示中の最新モデルがフルオプションで2,231万円。価格もおそらくは性能も倍以上の設定である。 ■旧車を知り、楽しむために 旧いクルマと新しいクルマ。その大きな違いはなんであろう?おそらくはトランスミッションではないだろうか。 もちろん今ならエンジンかモーターかということもあるであろうし、旧車でもATのクルマが好きな方もいるだろう。それでも会場を訪れる方々はMTを好む方が多いと思われる。 近年よくMTなどの時代じゃないなどと言われたり、MT免許がオプション的な扱いになる法改正が行われようとしている。確かにシステムとしてのトランスミッションで言えばATの方がすぐれているし、もはやよーいドンで速いのも間違いなくATだろう。それでもボク等はMTを好む。速さではなくシフトチェンジすることで走らせるのが楽しいからだ。 ノスタルジック2デイズはそうした走らせること、クルマを直すことの楽しさを表現するための知識や交流の場としてこれからも必要になるだろう。 再生の灯を絶やすな!マニュアルトランスミッションを決してロストテクノロジーになどしたりしない。この会場からはそうした決意にも似た熱気にあふれているように思えてならない。 [ライター・カメラ / きもだこよし]
2025年1月10日〜1月12日まで、幕張メッセにて「東京オートサロン2025」が開催された。「東京エキサイティングカーショー」としてスタートした1983年から数えて今回が43回目となる。 東京オートサロン事務局が公開した情報によると、今年の参加人数および出展者数は以下のとおりだ。 ■参加人数(※出展者、関係者を含む)・1月10日(金):63,982人(前回51,014人)・1月11日(土):102,175人(前回95,081人)・1月12日(日):92,249人(前回83,978人)●累計:258,406人(前回230,073人) ■出展者数・出展者数:389社(前回実績378社)・出展車両台数:857台(前回実績893台)・ブース総数:4,336小間(前回実績4,329小間) 朝イチに会場入りした時点で昨年よりあきらかに混んでいると感じたが、その印象は間違っていなかったようだ。来年はさらに・・・? ■駅前の混雑&駐車場に空きがない!? 初日の「ビジネスデイ(業界&報道関係者公開日)」は午前9時スタート。報道関係者の多くがそれよりも前に現地入りし「押さえられるものを"なる早で"押さえて」おかないと、撮れ高が確保できない可能性もあるからとにかく必死だ。 そのいっぽうで、業界関係者の多くが午前9時の開場をめがけて幕張メッセにやって来るため、駐車場が取り合い状態に。筆者の知人(業界関係者)も、駐車場にクルマが止められず、会場入りできたのは午前10時すぎとのことだった。 ちなみに筆者は・・・というと、幕張メッセまでの移動には公共交通機関(JR京葉線)を利用している。同業者から「えっ、幕張メッセまで電車で来るの?クルマじゃないんだ・・・」と驚かれたことがある。普段からクルマでの移動が多い分、電車(満員電車)での移動を好まない人も少なくない。 東京オートサロン会場まで公共交通機関(JR京葉線)を利用する理由は2つ。先述したとおり、駐車場確保に時間を取られたくないというのがまず1点。そして朝から晩まで会場で歩きまわり、自分の運転で自宅まで帰宅しなければならない。それならば公共交通機関の方が気楽、というのが2点目の理由だ(たまたま帰路は途中駅で座ることができ、東京駅まで爆睡してしまった)。 ■プレスルームは新年の挨拶の場を兼ねて ジャパンモビリティショーと同様に、東京オートサロンにもプレスルームが用意されていた(初日のみ)。ニューモデルやプレスカンファレンスなどの速報記事はここから発信されていることが多い。報道関係者が集うプレスルームに足を運べば、誰かしら同業者の皆さんと顔を合わせることができる。 そのため、東京オートサロンのプレスルームは新年の挨拶の場も兼ねている。つい1ヶ月ほど前の年末進行の苦労話などしたいものだが、実際にそんな悠長なことはいっていられない。各メディアが競争しているわけではないのだが、それでも注目のモデルはいち早く記事にして公開すればより多くのPV(ページビュー)が稼げるからだ。 そうなると、結果としてタイムアタックにならざるをえない。そういうときは「話掛けないでオーラ」が出ているので、頃合いを見て挨拶をするように心掛けている(かといって、プレスルーム内はギスギスしている雰囲気はないのでご安心を)。 ■日本車 トヨタがGR ヤリスをミッドシップ化してしまった「GRヤリス Mコンセプト」、その他にも新型ホンダ プレリュードプロトタイプや、マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R、スバル S210をはじめとする最新モデルのお披露目があった。 そのいっぽうで、トムスからはレストア済みのホワイトボディとなった状態のAE86など、新旧ともに話題満載だ。 数年前はGRヤリスをベースにチューニングしたクルマが多かったように記憶しているが、今年は比較的ばらけていたように見受けられた。そのなかでも第2世代スカイラインGT-Rや、AE86の人気は凄まじいことを実感した(そしてついに日産ブースではスカイラインGT-R EVの展示が)。 ついにスカイラインGT-RがEVに・・・。安い中古車を手に入れ、その分の予算をチューニング費用にをつぎ込む・・・といったいじりかたがもはやできない存在となってしまった感がある。 ■輸入車 チューニング&ドレスアップのベース車としていつの時代も格好の素材なのか、新旧ポルシェ911の展示が多かった。筆者がはじめて東京オートサロン会場に足を踏み入れたのは1992年だが、そのときもRUFのコンプリートカーが展示されていていたく感激した記憶がある。 また、ランボルギーニ ウラカンの後継モデルにあたる最新モデル「テメラリオ」も展示されており、注目を集めていた。オートサロンで実車を初めて見た人も多かったはずだ。 そして、お父さん世代には懐かしい、ケーニッヒ テスタロッサ エボリューションモデルがさらりと展示されていて驚いた。当時、1000psを標榜する超ド級のクルマとしてF40とは異なるファンを獲得していた1台だ。いまは絶版になってしまったようだが、フジミの1/24スケールプラモデルも販売されていたっけ。 最新モデルでは、フェラーリ プロサングエが数台展示されていたことにも驚かされた。 ■オートサロン会場の華であるコンパニオン 車輌の撮影と並行してコンパニオンの皆さんも取材。あくまでも個人的な感想だが、今年は「ガチ勢」のカメラ小僧が多かったように思う。至近距離でストロボをたいて撮影したり、ローアングルで撮影したりと・・・。それでも彼女たちは笑顔を振りまかなければならないわけだし・・・端から見ているよりも忍耐力がいる仕事かもしれない。 ただ・・・なかには「クルマ単体で撮影がしたい」という人もなかにはいて、コンパニオンに「ちょっとどいてください」と画角から外れてもらうように指示する人もいた。さすがにいえなかったけれど、そりゃあんまりだよ・・・。 ■まとめ:3日間で約26万人が来場した「東京オートサロン2025」に思うこと 今年の出展者数は389社、出展車輌台数が857台、ブース総数が4,336小間。幕張メッセのスペースを目いっぱい使ってのイベントだけに、1日でじっくり見てまわるのは不可能に近い規模だ。 それだけに、出展者側も目立たせるのも一苦労だ。インパクトを持たせるにはかなり大胆なことをやらないと素通りされてしまう。とはいえ、インパクト狙いでいくと、誰が見ても格好いいカスタマイズカーに仕上げるか、はたまた「その手があったか!」といった意外性。さらには「まさか!」と思うようなベース車を選ぶ必要がある。 個人的に印象に残った1台といえばこれだ。東京自動車大学校の生徒さんが手掛けたW124型のメルセデス・ベンツ。昨年この世を去ったブルーノ・サッコへのリスペクトが感じられる展示が印象的であった。 そういった作り手の想いは素人である我々も敏感に感じ取る。そして逆も然りだ。現存する貴重な1台のクルマがまったく別の姿へと変わってしまった状態を見るにつけ、本来であれば「踏み込んではいけない領域に足を突っ込んでしまった」展示車があるように感じたことも事実だ。 日本の枠を超え、世界的にも注目されているイベントだけに、日本人が持つ美徳感や美意識を忘れてはならないように思う。 なお、 2026年の東京オートサロンは、1月9日(金)〜11日(日)の3日間、幕張メッセで開催されるという。 今年はインフルエンザが大流行しているまっただ中での開催だっただけに、来年はもう少し平穏な環境で取材ができることを祈るばかりだ(ベビーカーや抱っこひもで赤ちゃんを抱えて見学しているギャラリーも少なくなかったので、同じ子育て世代の立場としては心配になってしまった) [ライター・撮影/松村透]
2024年11月17日(日)、岡山県真庭市で初の開催となった「MHヒルクライム/真庭速祭」。 モータースポーツ文化を、地域の活性化へとつなげる目的で企画された「公道ヒルクライム」のイベントだ。舞台となった広域農道「木山街道」では、プロドライバーによる本格的な走行が繰り広げられ、観客を魅了した。 ここで、本記事を通じて改めて強調しておきたい。 イベント終了後、木山街道や周辺での暴走行為や迷惑行為は絶対に避けたい。地域との調和があってこそのイベント。地元住民への配慮なくして、このすばらしいイベントは成り立たない。 今回は、来場者や関係者の声を交えつつ、この特別な1日を振り返る。 ■真庭速祭とは 真庭速祭は「真庭速祭実行委員会」が主催し、自動車メディア「モーターヘッド」が企画運営を担当。地元住民や行政との協力のもと開催されている。 舞台となったのは広域農道「木山街道」。ちなみに広域農道とは、農産物輸送のために整備された道のことだ。 木山街道は、標高500m付近の山間部を、アップダウンを繰り返しながら延びている。この道の区間に4.3km(計測区間/パドックからゴールまでは約6.5km)のセクション(コース)が設けられた。 そして、スタート地点には会場にはドライバーやメカニックが集うパドック、特設ステージ、飲食や物販コーナー、貴重な車両やエンジンが展示されるミュージアムも設置。来場者数を限定しながらも大盛況となった。 さらに、イベントの様子はYouTubeでもライブ配信され、会場に来られなかったファンにも熱狂が届けられた。 ■イベントダイジェスト 当日の朝は曇りで気温は17度。午前中には霧が立ちこめ、一部路面はウェットコンディションに。午後からは雨が降り出したため、路面はヘビーウェットとなった。それでも、プロドライバーたちは悪条件をものともせず、観客を唸らせる走りを披露した。 走行はクラスごとに分けられ、マシンが観客に囲まれながらスタートする様子はドラマチック。走行を終えたマシンがそろって戻るパレードランのような場面もあり、華やかな空気が漂った。 ▲出走前に安全確認を行う「ゼロカー」を、パイクスピークにも参戦する小林昭雄選手が担当。車両はパイクスピーク仕様のポルシェ911(type996)GT3CSが使用された。小林選手のスムーズなコース確認が安全面でもイベントを支えた ▲走行を終えて帰還するマシンたち。観客に拍手で迎えられていた ■ドライバーとマシンの顔ぶれ 真庭速祭では、チューニングクラスからレジェンドクラスまで、バラエティ豊かなマシンが登場。それぞれのマシンをトップドライバーたちが担当した。 チューニングクラス ・BOLD WORLD GT-R BNR34:稲岡優樹・FUJITA Engineering FD3S GT3:和田久・Jing BNR32 Group A spec:木下みつひろ・OS GIKEN TC24-B1Z / S30Z:井入宏之・HKS Racing Performer GR86:谷口信輝・ARVOU S2000:柴田優作 ●地元「オーエス技研」のマシンに熱視線 地元・岡山県のオーエス技研も「S30Z(フェアレディZ)」で出走。今回走行したマシンの中で、もっとも車齢を重ねた車両だった。自社開発されたエンジン「TC24-B1Z」を搭載するこちらのマシンには、同じく自社で開発・製作されたクラッチやLSDを搭載。ドライバーは井入宏之選手が担当した。 【VOICE】:OS GIKEN TC24-B1Zを見て 「地元企業の力を感じました」 「オーエス技研のマシンを目的に来ました。技術の結晶ですね。展示されていたエンジンも間近で見られて感動しました。市販車とは違う点も丁寧に解説していただき、勉強になりました」(宮本英貴さん 岡山県在住) ●「アルボー S2000」が再び木山街道を駆ける 真庭速祭のプロモーション映像にも登場した、人気ショップ「アルボー」のマシンも出走。S2000をベースとしたこちらのマシンは、ドライバーでアルボー代表でもある柴田優作選手自身が手掛けている。2023年のワールド・タイムアタック・チャレンジでクラス優勝を果たしている“国内最速級”のマシンだ。 レーシングクラス ・ZENKAIレーシング:林寛樹・ACR ASTON MARTIN V8 Vantage GT4:ハナ・バートン・Katsu Taguchi FIESTA Special:田口勝彦・CUSCO SUBARU Impreza / JGTC GT300:小林且雄・HONDA WTCC CIVIC:道上龍 ●「JGTC GT300 クスコ・スバル・インプレッサ」の勇姿にファン歓喜! 全日本GT選手権(JGTC)のGT300クラスで活躍した「クスコ・スバル・インプレッサ」が登場。このマシンを操ったのは、当時のドライバーである小林且雄選手。なんと、当時のレーシングスーツに袖を通しての出走だった。その姿は、あたかも時間を巻き戻したかのよう。ファンからは歓声と拍手が沸き起こっていた。 ●圧巻の走り!「Katsu Taguchi ・フィエスタ スペシャル」がイベント最速を記録 地元・岡山県出身のラリースト、田口勝彦選手が駆る「Katsu Taguchi ・フィエスタ スペシャル」が、この日のトップタイムを記録。2分11秒327を叩き出した。午後からの雨でヘビーウェットとなった木山街道をものともせず見せつけた走りは、今後の真庭速祭で目標タイムとして語り継がれるだろう。 ●MEC120を戦う「ZENKAIRACING v.Granz」が木山街道を疾走! 耐久レース「MEC120」に参戦するZENKAIRACINGのマシン「ZENKAIRACING v.Granz」が出走。代表でもある林寛樹選手がドライバーを務めた。また、ミュージアム内にてレーシングシミュレーターの体験ブースも展開、好評を博していた。 【VOICE】ZENKAIRACING ドライバー・林寛樹選手に聞く 先が見えないし、怖い…でも、とにかく面白い! 通常ではありえない2車線フルレーン走行、レーシングマシン(v.Granz)での走行、レーシングスリックでの走行、速度制限なし、制限区間以外は音量規制もなしという条件で、正式なコースとして全開走行できたことに感動しました。そして大変面白かったです。地元住民や関係者の皆様のご理解と協力のおかげで、この夢のようなイベントが実現できたことに、心から感謝申し上げます。 真庭速祭には、昨年のテストイベント時から注目しており「峠をレーシングマシンで全開走行する」という夢のような企画に心を奪われていました。 今年に入って高田さん、三栄さん、MADLANE大橋さん、多くの方々との出会いやご縁を通じて、関係者として参加する機会を得ることができ、本当に感謝しています。イベント終了から1週間経った今でも興奮が冷めません。真庭速祭は、たくさんの方々の想いをカタチにした特別なイベントです。これからも地元に根付く「秋祭り」のような継続的なイベントへと発展していくよう、微力ながらお手伝いできればと思っています。 ■レジェンドマシンの競演 往年のレースで輝かしい戦績を残したレジェンドマシンたち。その走りを一目見ようと、多くの観客がスマートフォンやカメラを手にスタート地点に集まった。 レジェンドクラス ・NISSAN R91CP:久保田克昭・RX-7 FC3S GTU IMSA:谷口信輝・ADVAN alpha 962C:諸井猛 ●デイトナ24時間レース優勝マシン「日産・R91CP」 1992年のデイトナ24時間レースで総合優勝を果たした「日産・R91CP」がヒルクライムに登場、V型8気筒ツインターボエンジンが咆哮をあげた。バーンアウトからスタートするその走りに、ギャラリーは釘付けとなった。 【VOICE】:R91CPを見て 走り去る音が忘れられない。 「R91CPを目の前で見られるとは思っていませんでした。この音は映像ではなく、生で体感しないとわからない迫力があります」(男性) デモラン ・Williams FW12:谷口信輝・MADLANE DIABLO GTR:大橋和生・Bond Cars Aventador SVJ:山田雅司 ●F1マシン「ウィリアムズFW12」に興奮! 1988年のF1で活躍した「ウィリアムズFW12」も登場。V型8気筒NAエンジンを搭載して戦ったこのマシンを、谷口信輝選手が駆った。 【VOICE】:ウィリアムズFW12を見て少年時代の憧れが蘇る 「TVで観ていたウィリアムズFW12を実際に目の前で見られるなんて。しかも火入れから!小学生の頃に戻った気分です」(男性) ●迫力!リバティーウォーク(LBWK)のトレーラーヘッドが峠を駆ける LBWK(リバティーウォーク) RUN ・LB40-AZ1 :後刻指名・LB 35GT-R :後刻指名・LB S15 SILVIA :後刻指名・LB Tractor Head :後刻指名・LB Tractor Head :後刻指名 人気ショップ、リバティーウォークが手掛けたドリフト仕様のマシンに加え、トレーラーヘッド4台が走行。重厚感あふれるトレーラーヘッドが駆け抜ける姿は、他のマシンとは異なる迫力を放っていた。 【VOICE】:マシンの迫力に圧倒された! 「初めて見る生の走行に感動しました」 「レーシングカーを見るのはもちろん良かったですが、トレーラーヘッドが走るシーンは圧巻でした。働く車がこんな形で公道を走るのを初めて見ました。今後も地域イベントとして継続してほしいです。広島でもこんなイベントがあればいいのに!」(男性 広島県在住) ■幅広い世代が楽しめる会場作り 特設会場では、モータースポーツファンだけでなく、家族連れも楽しめる工夫が満載だった。ミュージアム展示や物販、飲食エリアを通じて、地域の魅力や自動車文化を存分に感じられる空間が広がった。 また、特設ステージでは実況のほかにトークショーやジャンケン大会なども開催された。 進行役やゲストのトークでさらに熱狂 レース実況でおなじみの人気アナウンサー・ピエール北川さん、藤原よしおさんらが進行役を務め、ゲストとの軽快なトークで会場を盛り上げた。マシンや選手にまつわるトリビアを交えた楽しいやり取りに、観客も引き込まれていた。 【VOICE】:会場でしか味わえない魅力がある 音や匂い…現場ならではの臨場感を堪能 「音や匂いなど、現場でしか味わえないものがあるのが嬉しいです。実況のピエール北川さんのファンです。今日のトークもとてもおもしろかったです」(岡山県在住 生嶋美由紀さん) ●パドック見学 パドックエリアでは、走行を控えたマシンを至近距離で見学でき、観客とドライバー、チームクルーの距離が近いのも印象的だった。 マシンの整備作業やドライバーがリラックスする姿を、サーキットよりも近い距離で見られ、記念撮影に応じるドライバーの姿もあった。こんな場面も真庭速祭ならではの魅力のひとつかもしれない。 【VOICE】:地元で開催されたことを誇りに思う マシンやチームとの距離の近さがすごい 「地元で開催されたことを誇りに思います。ドライバーやチームクルーと会話できるのもすごいですね。今日は、30年前から交流のある田口選手の応援に来ました」(真庭市在住 内藤貴嗣さん) ●ミュージアム展示 ミュージアムでは、往年の名車やエンジンが数多く展示されていた。 歴史的なマシンを間近で観察できるのはもちろん、そのディテールに驚嘆したり、思わずため息をついたりするファンの姿が見られた。さらに、物販コーナーやドライビングシミュレーターの体験ブースも人気を集め、幅広い世代が楽しめる催しが充実していた。 「ZENKAIRACING」のシミュレーターコーナーでは今回のコースを再現! 【VOICE】ZENKAIRACING代表 ・林寛樹さんに聞く ヒルクライム走行にも出走したZENKAIRACINGが手がけるシミュレーターブースを、ミュージアムで楽しむことができた。代表の林寛樹さんに、今回の出展を通じて感じたことや、木山街道コースデータの製作秘話を伺った。 特製・木山街道の走行データを楽しんでいただきました。 普段は見ることのできない貴重なクルマやレーシングカーを間近で体験できたことは、来場された皆様にとって大きなインパクトを与えたと思います。加えて、私たちの最新レーシングシミュレーター(SIM)を通じて、時代の進化を伝える場にもなりました。SIMに馴染みのない方も含め、体験中には多くの会話が生まれており、そこに喜びを感じました。また、クルマ好きだけでなく、地元の家族連れや年配の方々も多く参加されており、地域の関心の高さを感じることができたことも意義深いものでした。 今回の体験コーナーでは、木山街道のコースデータをご用意しました。イベント2か月前から準備を進め、ギリギリでしたがイベント直前にベータ版が完成。最終調整を経て、約2000名の来場者のうち、約200名もの皆様に楽しんでいただくことができました。 限られた体験時間内では、通常のグリップ走行が中心でした。実は前日のテスト走行では、峠をドリフト状態のまま“一筆書き”で走り切ることも可能だったんです。この隠れた遊び方はまたの機会に…! 【VOICE】レーシングシミュレータースペース SimGoya代表・菅田政宏さんに聞く 株式会社オートショップカンダ代表で、シミュレータースペース「SimGoya」を運営する菅田政宏さんは、今回シミュレーター体験のアテンドスタッフとして携わった。岡山県民、そしてクルマを愛する一人としての思いを伺った。 地元の人間として携われてうれしい。青春のマシンたちとも再会できました。 今回、ZENKAIRACINGの林さんから地元開催ということでお手伝いをお願いされ、喜んで参加させていただきました。林さんはその名の通り「全開」で熱い方なので(笑)、その情熱に共感しながらお手伝いできたのがうれしかったです。 私がアテンドした方々の中には「レーシングシミュレーターの存在は知っていたけれど、実際に体験する機会がなかった」という方が多くいらっしゃいました。 今回の体験コーナーで、子どもたちが無我夢中でステアリングを握り、目を輝かせている姿がとても印象的でした。リアルとヴァーチャルが一つの場所で一体になったのを見たとき、レーシングシミュレーターも人の心を動かせるポテンシャルを秘めていると確信しましたし、この機会を通じてもっと身近な存在になればと思います。 岡山県民として、この真庭速祭を知った時から「何かの形で携わりたい」と思っていました。今回、スタッフとして現地で参加できたことは感慨深い体験です。FW12やMP4/6、グループAのGT-R・R91・GT選手権のF40など、まさに青春時代“ドンピシャ”なクルマたちがそろい、感動の連続でした。 特にグループAのGT-Rは、私が中学生の頃に初めて見たレーシングカーで、自動車業界に足を踏み入れるきっかけとなった車両です。その車両が、私の真後ろに展示されていて、本当にうれしかったですね。そして、FW12のエンジンに火が入った瞬間、思わず涙が出てしまいました。このイベントを通じて、来場された方がモータースポーツに興味を持ち、楽しんでいただけたなら幸いです。 ▲来場者にシミュレーターをアテンドする菅田さん。憧れのMP4/6の傍で仕事できたことにも幸せを感じていたそうだ ホンダRA271とマクラーレン・ホンダMP4/6の展示ブース ▲マクラーレン・ホンダMP4/6。アイルトン・セナが操ったマシンを360度見ることができた。「タイヤが意外と大きいね」という声が聞こえてきたほか、フロントウィングなど、マシンの緻密な造形に驚く声も多かった 「ホンダコレクションホール」による展示は、歴史的なF1マシン「RA271」と「マクラーレン・ホンダMP4/6」が並び、観客の目を引いた。 ▲ホンダ初のF1マシン「RA271」が展示された 【VOICE】エンジン車が持つ魅力を忘れてはならない 展示だけでもすごい! 「乗っているクルマはホンダ一筋です。今日は友人に誘われて初めて来ましたが、この展示だけでも大満足。EV化が進む中でも、こうしたエンジン車が持つ魅力を忘れてはならないですね」(男性) あの「トミタクZ」が登場 【VOICE】エンジンビルダー・富松拓也さんに聞く エンジンビルダーであり、オーエス技研のチーフエンジニア、人気YouTuberとしても知られる「トミタクさん」こと富松拓也さんの愛車「トミタクZ」が展示されていた。富松さんが復活させた“幻のエンジン”と呼ばれる「TC24-B1」を搭載したこのフェアレディZを一目見ようと、ファンが次から次へと訪れていた。 地元に根付くイベントとして続くことを願っています。 私たちの地元である岡山で、本物のレーシングカーが公道を走るという特別なイベントに参加でき、とても感激しました。実行委員長の大橋様をはじめ、関係者の皆様の多大なるご尽力のお陰です。 オーエス技研としても、1981年当時のTC24-B1エンジンを搭載した「トミタクZ」の展示や、現代版TC24-B1Zエンジンを搭載した「S30Z」レーシングカーの走行を通じてイベントに貢献できたことをうれしく思っています。 S30Zは、出走車両の中でも最も古い年式でしたが、そのNAキャブレターエンジンのサウンドを多くの方に楽しんでいただけたことが何よりの喜びです。 このイベントが地元に根付いた素晴らしい催しとして、次回、さらにはその先も続いていくことを願っています。今後も可能な限り協力させていただきます。ありがとうございました。 ▲TC24-B1は、当時のフェアレディZ、ローレルなどに搭載されていたL28型をベースにし、独自の技術でツインカム4バルブ(クロスフロー方式)にしたエンジンだ ●地元グルメと物販ブース フードエリアではさまざまなグルメが楽しめ、地元特産品のマルシェもにぎわった。オリジナルグッズなどの物販コーナーも並び、各ブース前には大勢の観客が列を作っていた。 立ち上げから携わってきた「木山神社」のブース 【VOICE】木山神社宮司・鈴木宏志さんに聞く 「木山神社・木山寺」のブースにお邪魔した。木山街道のすぐそばにある1200年以上の歴史をもつ木山神社。宮司の鈴木宏志さん自らもドライバーであり、軽四耐久レース参戦やフォーミュラ・ドリフトなどのサポートも行う。モータースポーツを心から愛し、この真庭速祭に立ち上げ当初から携わってきた。 このイベント名は、木山神社にちなんでいます 「立ち上げ当初から、運営を行う皆さんと一緒に、さまざまなことを経験してきました。 このイベント名は、木山神社から着想を得たものです。地元の皆様のご協力あって開催できました。あらためて感謝を申し上げます。イベントの発展を願います」 ▲S13シルビアのドリフトマシンを展示 ■安全を最優先にしたスムーズな運営 当日は、複数の特設駐車場からシャトルバスを運行。会場周辺の混雑を避ける配慮がなされた。交通整理のスタッフ配置や人数制限の効果もあり、イベントは混乱なく進行した。 【VOICE】:「スタッフの対応が素晴らしかった」 スタッフの皆さんの気持ちも伝わってきた 「駐車場から会場までのアクセスがスムーズで、子ども連れでも安心して楽しめました。スタッフの皆さんが一生懸命対応してくれているのが伝わってきました」(女性 岡山県在住) ■地域とモータースポーツがつながる未来へ 真庭速祭は、自動車文化を地域の活性化へとつなげるイベントとして、大きな一歩を踏み出した。来場者に声を掛けるたびに「次回もぜひ参加したい」「このようなイベントがもっと広がれば」といった期待の声を次々に耳にし、イベントの意義もしっかりと伝わっていることが感じられた。 実況では「グッドウッドのような存在に」という言葉が繰り返し語られていた。真庭速祭が、いずれは地域に根ざしたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのような、モータースポーツの新たな拠点となるかもしれない。 真庭速祭がさらなる成長を遂げ、地域とモータースポーツが響き合うイベントとなっていくことを願わずにはいられない。 ■フォトギャラリー ■取材後記 地域とモータースポーツが一体となった、特別な1日だった。筆者の地元・岡山での開催とあって、地元住民としても誇らしい気持ちに。「クルマ愛」と「地域愛」であふれた一日を過ごすことができた。 しかし、今回の成功を次回へとつなげていくには、地域への敬意はもちろん、私たちファンの自覚ある行動が不可欠だ。木山街道を暴走する行為、地域住民の皆様に迷惑をかける行動は、真庭速祭の継続を間違いなく危うくする。 この感動を共有し続けていくためには、イベントを応援するすべての人が「リスペクト・ローカル」を胸に刻み「ゆっくり走ろう、真庭」を体現することが大切。イベントを守る責任は、私たちファン一人ひとりが担っているといっていいだろう。 [取材協力 / 真庭速祭実行委員会 真庭速祭 運営事務局 Office Tomitaku 木山神社 SimGoya ZENKAIRACING 来場の皆様 順不同] [ライター・撮影 / 野鶴美和]